ひとりの夜に観たい映画5選|静けさの違う作品を気分で選ぶ

ひとりの夜に観る映画は、静かならどれでもいいわけではありません。何も起きてほしくない夜、孤独に浸りたい夜、少し切なくなってもいい夜。静けさの種類が違う5本を紹介します。

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集中力普通

誰とも話さないまま一日が終わった夜があります。予定がなかったわけではなく、単にそういう日だった、というだけの夜です。

そういうときに賑やかな作品を再生すると、画面の中の楽しさと自分の部屋の温度差で、かえって疲れることがあります。だからといって、静かな映画なら何でもいいかというと、そうでもありません。

ひとりの夜にも、ほしい静けさの種類があります。 何も起きてほしくない夜と、孤独そのものに浸りたい夜では、選ぶべきものが違います。

この記事では、静けさの質がそれぞれ違う5本を並べました。作品選びでは、Filmarksや映画.comなどに投稿されたユーザーレビューの傾向も参考にしています。

何も起きない夜がほしいなら、パターソン

2016年公開のアメリカ映画。上映時間は約118分。日本公開は2017年です。

バス運転手の男性が、月曜から日曜までの一週間を過ごす。それだけの映画です。彼は運転をして、詩を書き、犬を散歩させ、また同じ朝を迎えます。

感想を読んでいると、この「何も起きなさ」がそのまま評価されているのが分かります。同じような日常の繰り返しが心地いい、ずっと見ていられる、日常の小さなものを見る映画だ、といった反応です。何度も観たくなるという声も見かけます。

同時に、起伏がない、退屈だった、何が面白いのか分からなかった、という感想も確かにあります。これは作品の性格そのもので、好みが分かれて当然だと考えています。

選ぶ基準ははっきりしています。今日は映画にまで事件を起こしてほしくない、という夜。物語に何かを期待していない状態のほうが、この作品は入ってきます。

孤独を消したくない夜には、ロスト・イン・トランスレーション

2003年公開のアメリカ・日本の映画。上映時間は約102分。日本公開は2004年です。

東京のホテルに滞在する二人が、眠れない夜に顔を合わせるようになります。

この作品の感想でよく書かれているのは、言葉が通じない場所にいる感覚と、二人の距離感についてです。恋愛と呼ぶには曖昧で、友情と呼ぶには近い。その名前をつけにくい関係が、深夜の東京の風景と一緒に記憶に残る、という反応が並びます。

一点だけ、日本の読者向けに触れておきます。日本の描写に違和感がある、東京観光映画のように感じた、という感想も少なくありません。ここに描かれる東京は、外から来た人の目に映った断片であって、日本の実像を写したものとして観る作品ではないと考えています。

当サイトがこの1本を選んだのは、孤独を明るく解決してみせないからです。ひとりでいることを慰められるのではなく、同じように所在のない人が同じ時間を過ごしている、という距離感が心地よく感じられる夜があります。

ご飯を作って食べるだけでいい夜に、リトル・フォレスト 夏・秋

2014年公開の日本映画。上映時間は約111分です。

東北の小さな集落に戻った女性が、自分で育てたものを料理して食べる。夏と秋のあいだの暮らしが、そのまま続いていきます。

感想の中心は、やはり料理です。おいしそう、季節の食材が知れる、生活音が心地いい、疲れているときに観たくなる。そういう言葉が並びます。

ただ、田舎暮らしを理想化しているように感じた、実際の田舎暮らしはもっと大変だ、という受け取り方もあります。ストーリー性を求めると弱い、という声もありました。この作品を「こういう生き方が正解だ」と読むと、たしかに窮屈になります。

当サイトはこの1本を、今日はご飯を作って食べるだけでもいい、と思えるようになるための作品として置きました。仕事や人間関係の話がいっさい出てこない時間を眺めていると、自分の生活の単位も少し小さくなります。

なお、この作品には『冬・春』という続きがあります。そちらは雨の日に観たい映画5選で紹介しています。

誰かの会話だけ聞いていたい夜、コーヒー&シガレッツ

2003年公開のアメリカ映画。上映時間は約97分。日本公開は2005年です。全編モノクロで、11の短い話が並んだオムニバスになっています。

登場人物がコーヒーを飲み、煙草を吸いながら、とりとめのない話をする。基本的にそれだけが繰り返されます。

寄せられている言葉は、独特の間、気まずさが面白い、雰囲気がいい、コーヒーを淹れて観たくなる、といったものです。何も起こらない会話が好きだ、と書いている人もいます。

もちろん、物語がほしい人や、起承転結を期待する人には向きません。11話それぞれに結末らしい結末はなく、会話が始まって、終わります。

この作品を選んだのは、話す気力はないけれど、完全な無音も落ち着かないという夜があるからです。喫茶店の隣の席の会話を、意味もなく聞いているような時間になります。短い話の集まりなので、途中で止めても支障がありません。

少し切なくなってもいい夜なら、秒速5センチメートル

ここで紹介するのは、2007年公開の新海誠監督によるアニメーション作品です。3つの話からなる構成で、5本のなかで最も短く、1時間ほどで観終わります。

小学生のときに親しかった二人が、進学や引っ越しで少しずつ離れていく。時間と距離が主題になっています。

映像美と、時間や距離の描き方を評価する反応が多い作品です。初恋や、もう戻らない時間について書かれた感想が並びます。観る年齢や、その時点での自分の経験によって印象が変わる、という声も目立ちます。

同時に、この作品には明確な低評価もあります。意味が分からない、主人公に共感できない、物語として合わない、映像以外に入り込めなかった。そうした感想は一定数あり、隠す必要はないと考えています。

だからこの1本を、静かな夜の万能枠にはしません。少し寂しさのほうへ沈むことを、今夜は受け入れられる。そういう状態のときにだけ選んでください。

今夜ほしいのは、どんな静けさ?

今夜の気分 選ぶなら
何も起きてほしくない パターソン
孤独そのものに浸りたい ロスト・イン・トランスレーション
食べる・作る・暮らすところへ戻りたい リトル・フォレスト 夏・秋
誰かの会話だけ聞いていたい コーヒー&シガレッツ
少し切なくなってもいい 秒速5センチメートル

「静か」と「癒やし」は別のもの

静かな映画がすべて癒やしになるわけではありません。この5本のなかにも、観たあとに寂しさが残るものがあります。

疲れきっていて、とにかく気持ちを落とさずに眠りたい夜なら、静けさよりも安心感で選ぶほうが確実です。逆に、少し感情が動いてもいいと思える夜には、その寂しさごと味わえます。

同じ「静かな映画」でも、翌朝の自分に残るものが違う。 そこまで含めて選べると、ひとりの夜の時間は使いやすくなります。

同じ静かでも雨の日の過ごし方から選びたいなら雨の日に観たい映画5選、感情のほうを動かしたい夜は泣きたい日に観たい映画5選、頭を使わずに済ませたい夜は仕事で疲れた夜に観たい映画5選をどうぞ。

作品の内容や配信状況は変わることがあります。上映時間や公開年などの情報は、視聴前に各作品の公式情報でご確認ください。